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ジャガイモと大根から「水あめ」
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麦芽飴をつくりたくて麦芽を探していましたら、『大根を使ってもあめを作ることができるらしい』
とのゲストの書き込みがあり、やってみることにしました。麦芽にも、大根にも消化酵素のアミラーゼが含まれており、理論上は大丈夫なはず… (*^^)/
できあがった「大根あめ」はというと、…。大根のニオイがします。 ヽ(^。^)丿 まぁ、大根を使っているのですから、当然といえば当然のはずなんですが、鼻にプンプンと大根特有のニオイが突き刺さってくるのです。それでも、当初の目標である水あめには、きちんとなっているので、よしとしましょう。 \(^_^
) ( ^_^)/
水あめ(40cc)を作る基本的な材料
じゃがいも 大きめの中サイズ(約200gのもの) 2つ |
大根 200g |
水 300cc |
Let’s make!
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作り方 |
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1 |
【ジャガイモをすり下ろす】
ジャガイモはきれいに洗い、皮をむいておきます。芽がでて青くなっている部分があれば、取り除いて、おろし器をつかってジャガイモをすり下ろします。すり下ろす目が幾つかあるおろし器では、細かい目の方を使って、細かく下ろします。
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2 |
【でんぷんを取り出す】
すり下ろしたジャガイモをさらし布に包み、ボールに張った水の中でさらし布をもんだり、振ったりすることで、でんぷんを洗い出します。
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3 |
【でんぷんを沈殿させる】
でんぷんを洗い出した水を10分ほど静かに置いておき、上澄みの水を捨てます。ボールの底には、真っ白のでんぷんが沈殿しているのが見えるはずです。この水交換を2度か3度繰り返します。
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4 |
【片栗粉を集める】
水を捨てた後に残った白いでんぷんは、一般に片栗粉と呼ばれることが多い、じゃがいもでんぷんです。
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5 |
【糊化(α化)させる】
じゃがいもでんぷんに水を加え、中火にかけて加熱します。しばらくすると、不透明だった水が透明に変わり、のりのように糊化し始めますので、そのまま3分ほどしゃもじで混ぜながら加熱します。
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6 |
【大根をすり下ろす】
おろし器をつかって大根をすり下ろします。細かくすり下ろす必要はないので、粗い目の方を使っても大丈夫です。下ろした大根は、さらし布でこして、カスと汁に分けます。
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7 |
【湯煎にかける】
大根の汁には、でんぷんを溶かして糖液にする酵素「アミラーゼ」が含まれています。アミラーゼは、熱に弱いので、65度の湯煎にかけて温めます。
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8 |
【大根の汁をでんぷんに加える】
糊化したでんぷんの温度が、65度になったら、大根の汁を加えます。大根の汁とでんぷんが十分に混ざるように、攪拌します。
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9 |
【保温する】
酵素「アミラーゼ」がでんぷんを糖液に変える作用は、高温なほど効率がいいので、高温を維持できるように保温ポットに入れて、8時間ほど保温します。
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10 |
【煮詰める】
8時間後に、でんぷんの汁を煮詰めます。煮詰め始めると、アクがでてくるので、目の細かいざるなどですくい取ります。
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11 |
元のでんぷんの体積くらいまで煮詰めていくと、粘性がでてきて、泡のでかたが変わってきます。焦げないように弱火にして、さらに煮詰めます。
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12 |
【できあがり】
ほんのりと大根の香りがする水あめのできあがりです。ちょっと煮詰めすぎて、茶色に色づいてしまいました。
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ここでの「こつ」
※1 【芽がでて青くなっている部分】
じゃがいもが光を浴びて、表皮が青くなっていたり、芽がでていれば、取り除きます。これら青い部分には、「ソラニン」という、えぐ味のある毒性物質が生成されているためで、腹痛や胃腸障害、虚脱、めまい、眠気、下痢などの諸症状がでるそうです。ただし、こういった諸症状がでるには、大量のソラニンを食べなければならず、強い苦みも伴うことから、必要以上に神経質になる必要はないようです。
なお日本では、1973年以来、発芽防止のために放射線を照射することが許可されているため、普通のスーパーで市販されているじゃがいもは、芽がでることは少ないようですが、発ガン性の危険性も指摘されています。
※2 【水あめって単なる砂糖水ではない】
水あめは、単に砂糖水を煮て水分を飛ばしたものではありません。砂糖水を煮詰めたものに強い衝撃を与えると結晶化してしまうことがあるのですが、水あめを加えるとそのような結晶化を防ぐことができます。これは砂糖水と水あめの組成の違いにあります。
糖分子の最も小さな構成単位を単糖類と呼び、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、ガラクトースなどがあります。この単糖類が結合したものに、砂糖や水あめがあるのですが、砂糖(ショ糖)は果糖とブドウ糖がつながってできた糖で、水あめ(麦芽糖)は、ブドウ糖が2つつながってできた糖という違いがあります。この違いが衝撃を加えたときに結晶化しやすいかそうでないかの差につながります。またこれらの糖には甘さにも違いがあります。例えば砂糖(ショ糖)の甘さを1とすると、水あめ(麦芽糖)は約0.6の甘さしかなく、ブドウ糖は0.55の甘さになります。(下表参照)
甘味料 |
甘味度 |
ショ糖100gと同じ甘さにするための相対重量(g) |
ショ糖(砂糖) |
1 |
約 100g |
麦芽糖(水あめ) |
約 0.6 |
約 170g |
乳糖 |
約 0.27 |
約 370g |
ブドウ糖 |
約 0.55 |
約 180g |
果糖 |
約 1.15 |
約 87g |
ちなみにでんぷんはブドウ糖分子がくさりのように連鎖状につながってできたものであり、アミラーゼ(ジアスターゼともいう)と呼ばれる酵素で、麦芽糖に分解することができます。今回使った大根や麦芽には、このアミラーゼが含まれており、でんぷんを麦芽糖に変えることができます。
※3 【高温なほど効率がいい】
65度以上になると、アミラーゼが熱変成してしまうので、最高温度は65度になります。アミラーゼが熱変成する温度以下では、温度が高いほど、化学反応する速度が速くなります。
※4 【警告】
注意喚起です。手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。
参考文献
・砂糖のひみつ 小竹竹香子
佐々木和子共著 さ・え・ら書房 ISBN4-378-03857-9
・NHK男の食彩 2000年9月1日発行 「味の手づくり工房」水あめ
・マーガレット洋菓子店のホームページ http://www.marguerite.info/
の砂糖のページ
・中村学園大学図書館さん
の食品加工学1994年(平成6年)第八回の試験問題