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発酵道の奥深さにロマンを感じる 「しょうゆ醸造」
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これまで醤油のレシピは試行提供を続けてきました。その理由は、味噌をつくるときにできるたまりと同じ方法で醤油を作ろうとしてきたからですが、やっぱり大豆に麹菌を繁殖させないと気が済みません。試行提供版では、「正しい醤油の作り方になっていない!!」 という意味でずっとひかかるものがあったわけで、日本の代表的な調味料である醤油を、このままいい加減な作り方のままにしておきたくない。そういう思いにかられて、もう作らない!と、心に決めていたしょう油醸造に再チャレンジすることにしました。
また、今回は強力な助っ人もつきました。奈良県の片上醤油さんです。Webやメールで詳細な説明もいただき、気合いも十分ということで、さぁ、がんばろっと o(^o^)o
出来上がり分量 2〜3リットル程度の基本的な材料
用意しておきたい器具
Let’s start!
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作り方 |
写真 |
1 |
【大豆を準備する】 今回の例
木曜 23:00 以下同様 仕込み適期は、2月頃から25℃以下の5月頃までかな。。
大豆は、洗ってから一晩水に漬けておきます。なお、水を吸った大豆は、2倍強に膨れ上がるので余裕のある容器を使うことと、たっぷりの水を入れておくことをお勧めします。
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2 |
【大豆を煮る】 金曜
13:30
はがれた大豆の皮が蒸気口を塞いでしまわないように、圧力鍋の1/3以下の量になるように小分けし、落とし蓋をします。水は大豆に対してひたひたよりもちょっと多めにして、加熱します。大豆の皮が浮いてきたら、取り除きます。
沸騰すると、灰汁がでてきますので、取り除きます。
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3 |
【圧力をかける】
大豆の皮がはがれて、蒸気口を塞ぐような事故にならないように落とし蓋をして、圧力をかけます。煮る時間は、沸騰後60分/蒸らし10分です。
圧力鍋が無いときは、ふつうの鍋で8時間程度煮ます。みそ造り用の大豆に比べれば、格段に長い時間、煮るわけです。
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4 |
【小麦を用意】 金曜
14:00 全粒の小麦(粉ではない)または、小麦粉(強力粉)を用意し、しゃもじで混ぜながら、フライパンで煎ります。火がとおると、混ぜ続けていても焦げはじめるので、その頃合いで火から下ろします。
なお強力粉の場合は、必ずしも乾煎りしなくてもいいそうです。
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5 |
【小麦を挽く】
小麦が冷めたら、擂り粉木で砕きます。砕いた小麦は、極端に大きな粒がない限り、いろいろな粒の大きさがあってもいいでしょう。
※粉砕済みの小麦を使ったので写真は格好だけ… (^_^;)
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6 |
【大豆の煮上がり具合を確認】 金曜
15:00 大豆を蒸らし終えたら、つぶれる直前の状態までやわらくなっているかを確認します。味噌用の大豆では、「親指と小指ではさんでつぶれるくらい」、という表現で表されますが、これよりももっとやわらかく、大豆の形が崩れる直前の状態まで煮るのが最良です。
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7 |
【大豆をさます】 金曜
15:10 大豆をザルにとって余計な水分を落としてから、40℃以下になるまで冷まします。40℃以上あると、次に混ぜ合わす種麹(以下ここでは麹菌と呼びます)が、ダメージを受けてしまうため、内側にある大豆まで確実に40℃以下になったことを確認します。
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8 |
【麹菌と小麦を混ぜ合わせる】 金曜
15:30
小麦を1/5量ほど別容器にとりわけ、そこに麹菌をまんべんなく振るい落として、丹念に混ぜ合わせます。これを残りの小麦とあわせて、十分に混合します。しつこいくらいに混ぜ合わせておかないと、麹菌が大豆に均一につかないため、発酵がうまく進まない恐れがあります。
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9 |
【大豆と小麦を混合】 金曜 16:00 麹菌と混ぜ合わせた小麦を、大豆と混ぜ合わせます。小麦が多すぎるように見えますが、発酵がすすんで一番手入れくらいになると、大豆が吸っているたくさんの水分で、小麦粉がそぼろ状になります。
以下では、大豆と小麦を合わせたものを単に
「麹」 と呼びます。
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【盛り込み】 金曜 16:30 麹を山形に盛ってさらし布で包み、麹室に入れます。麹室内部の初期温度は32℃に維持します。
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盛り込み後6時間程度は、麹からの発熱はありませんので、32℃を維持できるように加温します。また、麹室内部に温度のばらつきがでないように、麹室全体を毛布などで保温します。
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盛り込み後6時間を超えると、麹からの発熱がはじまるため、適宜加温を保温に切り替えます。特に12時間前後になると発熱が顕著になりだすので、保温を放熱に切り替えるなどして、麹の品温維持に努めます。
場合によっては、麹の品温が40℃を超えることもあります。麹の品温が麹室の設定温度(32℃)を上回るようであれば、麹室の換気を促すなどして温度調整します。
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【1番手入れ】 土曜
12:30 盛り込みから18時間後に1番手入れを行います。大豆がかたまりになっていますので、ほぐして酸素を補給し、余分な熱と蒸気を取り除きます。
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手入れ後は、麹の厚みを2〜3cmに薄くすることで、盛り込みのときよりも表面積を広げ、放熱を促します。
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麹室に入れ込むときには、互い違いに積み重ね、表面積をかせぐなどします。
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1番手入れ以降の麹室内部の目標維持温度は28℃です。麹の品温を、麹室と同じ28℃にできればいいですが、なかなか難しいものです。ただし、麹の品温が40℃を超えないようには最大限の努力を尽くします。(さらし布では包み込みません)
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【2番手入れ】 土曜
21:30
盛り込みから29時間後に2番手入れを行います。1番手入れと同じく、大豆をほぐして酸素を補給します。手入れ後は、さらにうすく平らにならして麹室に入れます。
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2番手入れ後の麹室内部の目標維持温度は26℃です。1番、2番手入れだけでは麹の品温を40℃以下に保てないときは、適宜3番、4番手入れを行いますが、手入れは麹に与えるダメージも大きいことから、極力麹の厚みを薄くしたり、麹室の温度管理をするなどして、手入れを回避します。
写真では、麹室の温度管理をするために扇風機を回して、冷気を強制的に送り込んでみました。この方法は確実に温度を下げられる一方で、ひとたび管理をおろそかにすると、必要以上に温度と湿度を下げてしまい、発酵に適した環境から外れてしまうというリスクがあります。 (^_^;)
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【出麹】 日曜 13:30
盛り込みから45時間後に出麹、つまり、麹として晴れてできあがりになります。もし醤油醸造用の麹菌を使っていると、大豆が緑色になっているのが見られるはずです。
発酵途中で低温になるなどして、イマイチ発酵がすすんでいない場合は、適宜延長します。
※あーぁ、納豆菌を繁殖させちまった… という方へ
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【仕込み】 日曜 14:00〜3週間
仕込む容器の内側にポリ袋を二重に入れます。
ポリ袋に大豆を入れ、冷蔵庫に入れて十分に温度を下げた水に塩を溶かして作った塩水をとあわせ(以下
「諸味」 と呼びます)、十分に攪拌します。
正規の方法だと、5日に1回くらいの割合で、荒櫂(要するに表面に浮いているものを砕き、沈めます)を行います(とくに諸味を混ぜ合わせるような攪拌はしません)が、味噌作りで楽チンをした方法が今回も成功しましたので、そちらの方法をご紹介します。正規の方法にこだわりたい方はこちら。
空気を抜きながら、ポリ袋の口をしっかりと閉じます。保管場所としては、3週間くらいは、冷所に保管します。
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【発酵期間中の手入れ】 仕込み3週間目〜9ヶ月前後
諸味にしてから3週間経った頃に、少し暖かめのところに置き換え、品温が上がるようにすると、発酵がはじまります。発酵がはじまると、表面に小さな泡がプクップクッと出てくるようになります。
一度ポリ袋のふたを開け、櫂入れをします。酸素を補給することで、着色を促すことと、発酵を促すことが目的ですので、底まで十分に攪拌するようにします。攪拌後は、再び、空気を含まないようにポリ袋の口をしっかりと閉じます。 ※ポリ袋の口を閉じるときには、空気を十分に追い出しておかないと、好気性の産膜性酵母が繁殖する恐れがあります。 この作業を3ヶ月おきに繰り返します。
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【寝かせる】 仕込み9ヶ月前後 この頃からは静かな発酵に切り替わります。発酵がおさまってきたら、空気が入らないように表面をぴっちりとポリ袋で覆い、ふたたび冷暗所で保管します。
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【絞る】 最短で仕込み9ヶ月後
最初に仕込んでから、最短でも9ヶ月後、できれば1年間は熟成させます。今回は、まる2年熟成させてみました。
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【絞り袋】
さらし布を長方形の袋状に縫製します。ミシンで頑丈に作りましょう。
この袋状の布を絞った醤油が流れ出るようなカゴ(写真では白いカゴ)に入れ、さらに容器(写真では黄色い容器)で流れ出た醤油を受けます。
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【諸味充填】
袋状のさらし布の中に、諸味が2〜3cm厚さになるように入れます。諸味を入れては、じゃばら状に折りたたみ、また諸味を充填するということを繰り返します。
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【諸味充填の仕舞い】
さらし布の残りが20cm以上残るようにして、この部分を丸め込むようにたたみ、押さえても諸味が出てこないようにします。
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ちょっと手で押さえてみました。
出るわ出るわ。まぎれもなくこれは醤油です。
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【瓶詰め】
漏斗を使って、醤油を瓶につめます。70℃で30分間湯煎して殺菌すれば、長期保存ができる醤油になります。
ここは是非、手作りならではということで、生のままの生醤油でいただきましょう。
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【できあがり】 自家醸造醤油のできあがりです。仕込み当初は肌色だった大豆も、ばっちりと醤油の色に変わり、絞れた醤油はまさしく醤油!!
まずは生醤油でぶっかけうどんを食べ、次に卵かけごはんをたいらげ、大満足 ヽ(^。^)丿
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ここでの「こつ」
※1 【大豆】
首都圏を中心に活動している生活クラブ生協の場合、通常期は大豆500gを350円で販売しています。
また、小売り単位は大きくなりますが、味噌の仕込み時期になると販売単価が下がり、
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1月20日頃には、2月末の配達分の注文受付があり、400円/kg程度
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2月20日頃には、店頭販売があり、450円/kg程度 (いずれも1kg単位での販売)
になります。250g単位で販売しているスーパーに比べると、格段にお買い得!!
ただし、味噌造り講習会などが予定されていると、麹も大豆も取り分けられて、店頭から消えていることがありますので、お店の方に聞いてみましょう。
※2 【一晩水に漬け】
最近アルカリイオン整水器が流行っています。乳酸菌や酵母菌が、飲用範囲のアルカリイオン水で生育が阻害されるという報告は、特段見あたなかったのですが、菌の生育環境としては、いずれも弱酸性がお好みのようです。仕込みに使う水は中性水にしておくのが無難でしょう。 (^_^;)
※3 【灰汁がでてきますので、取り除き】
前日から水でふやかした大豆は、その水のまま火にかけます。このとき圧力はかけないのがポイントです。沸騰すると、大豆からたくさんの泡がたってきます。圧力がかかっていると、この泡のせいでふきこぼれがおきるのです。この泡(灰汁)を3分〜5分ほど、ていねいにとっていると、新たな灰汁はでてこなくなります。そうなってから圧力鍋に蓋をして、圧力をかけるようにすると、大豆のゆで汁が吹きこぼれることを、かなり減少させることができます。
※4 【乾煎りします】
一度に乾煎りしようとすると、フライパンからこぼれてまわりが真っ白になってしまうかも…。フライパンの容積見合いになりますが、しゃもじで混ぜたときに余裕をもってまぜられる分量に小分けした方が無難でしょう。27cmの中華鍋だと、500gに小分けするくらいでちょうどでした。
小麦を煎っていると、おもちを焼いているような香ばしいにおいがしてきますよ。
※5 【擂り粉木で砕きます】
小麦が粒のまま残らないようにします。タンパク質を分解できる麹菌のプロテアーゼであっても、粒のままだと分解できず、最後まで粒々が残ってしまうのです。
※6 【大豆の形が崩れる直前の状態まで煮るのが最良】
大豆が煮くずれてしまうと、栗きんとん状態になってしまい、酸素が大好きな麹菌が大豆の表面に繁殖することができなくなってしまいます。また、大豆は煮上がったとき以上には、ふやけないので、大豆の成分が醤油になれず、歩留まりが悪くなってしまうのです。
つまり栗きんとん状態になる、一歩手前がベストなのです。
※7 【麹菌を茶こしに入れ】
味噌用の種麹は、真っ白のものが多いようですが、しょう油用の種麹は緑色でした。初めてみたときは一瞬、ギョッとしたものです。味噌用としょう油用の種麹の違いは、アミラーゼ重視か、プロテアーゼ重視の差かな?
※8 【そぼろ状になります】
大豆の表面の水分が多すぎると、雑菌が繁殖してしまいかねません。麹菌が水分を求めて一生懸命に活動するくらいの水分量になることが大切です。
※9 【麹室内部の初期温度は32℃に維持】
今回使った麹室はこちら
はじめは32℃まで加温します。加温の手段としては、ホットカーペット、ホットクッション、こたつ、アースノーマット、電球などの熱源から選びます。また適宜毛布やふとんで覆い、保温に努めます。
盛り込みから1番手入れまでは、過保護なまでに麹を守り、元気をつけさせることに専念しますが、1番手入れ以降は、厳しい環境(適温よりもやや冷たい環境)において、麹菌に身の危険を感じさせて菌体を作らせるのです(詳細は次項)
このため2番手入れ後には、麹室内部をさらに26℃まで下げて、麹を繁殖させますので、この盛り込み作業の季節としては、自ずと5月頃までということになりそうです。
なんにしろ、麹の温度を維持するために、頻繁に温度チェックし、適宜麹の表面積を広げることが欠かせません。
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麹の表面(赤線)が適温だとしても、麹の内部(青線)は、暴走していることがあり、温度推移に大きな違いがあることがわかります。
こういった場合は、麹の盛り込み厚さを薄くし、表面積をもっと拡げます。そうすれば、麹の表面と内部の温度差を縮めることができ、全体を適温に近づけることができます。 |
※10 【18時間後に1番手入れ】
醤油醸造に必要な酵素は、大豆に多く含まれるタンパク質分解酵素のプロテアーゼです。麹菌は、発酵するだけなら40℃でも発酵します。しかし40℃にもなると、納豆菌などの雑菌も繁殖し始めますし、麹菌も安易に繁殖しはじめ、でんぷんを分解させることが得意な「アミラーゼ」が多く分泌されてしまい、何よりも大切な、醤油を作るための酵素「プロテアーゼ」が、たくさん生成されなくなってしまうのです。
プロテアーゼを多く分泌させるには、麹菌を低温の環境におき、菌体を作らせるようにしなければなりません。麹菌は菌体を作ろうとした場合には、タンパク質の合成に欠かせないプロテアーゼを生成しますので、これを醤油醸造に利用するわけです。
ところが、発酵がすすんでいくと、麹がひとつの大きな塊になってきます。この塊の内部は、発酵熱のため、高温になってくるので、プロテアーゼの生成には適していません。そこで、1番手入れでは、小さな塊にほぐすことで、余分な発酵熱を取り除き、酸素を補給してやるのです。大豆の粒レベルまで分けられるといいんですが、それもなかなか大変なので、テキトーに小さな単位に分けましょう。
また大豆がやわらかいので、手で無造作につかむとつぶれます。やさしくほぐしてやりましょう。
麹を厚く盛ると、内部の品温がどうしても上昇してしまいがちですので、品温があがらないように、2cm〜3cmほどの薄さで盛るようにします。
納豆の作り方では、始め41度〜43度で発酵を進め、18時間〜20時間後に加熱を防ぐために25度まで下げて作りますが、麹づくりでは、納豆菌は雑菌のひとつですから、この納豆が繁殖しないように、納豆の作り方とは正反対の作り方、つまり低温を維持することがたいへん大切になります。
※11 【麹の品温が40℃を超えないように管理】
品温が40℃を超えると、納豆菌等の雑菌が繁殖し始めます。納豆菌も大豆のタンパク質を分解する力は強力なので、納豆菌が繁殖したからといって、すぐに廃棄処分になるわけではないのですが、風味は損なわれてしまいます。麹の品温は28度になるように、麹室の換気をするなどします。
※12 【2番手入れ後の麹室内部の目標維持温度は26℃】
醤油用の大豆の麹は、米麹よりも生育が早く、かつ発熱量も多いので、米麹を作ったことがある方は、まだまだ大丈夫だろうとタカをくくっていると、あっというまに40℃いや、45℃を超えて、50℃近くまで温度が上昇し、納豆菌を培養しているような環境になってしまい、失敗しかねません。温度管理には、細心の注意が必要です。ここまでの過程でじゅうぶん思い知らされているはずなので、いまさら言うことでもないか…。 (^_^;)
※13 【あーぁ、納豆菌を繁殖させちまった… という方へ】 2004.1.16更新
すぐにあきらめるのは、大豆と麹菌に失礼です。 (^_^;) 納豆菌は粘っこいという点で、見た目はヒジョーに悪いですが、大豆を分解する力はピカイチです。若干、できあがりの芳香に欠けますが、半年経って発酵がおさまってくる頃には、納豆菌の粘つきも減り、1年も経つころには、麹菌の繁殖に成功したものとの「見栄え」上の区別はつきにくくなるくらいです。一度、その失敗作も仕込んでみて、比較してみてもいいかもしれません。 ここでお勧めしている方法では、毎日の櫂入れもなく、3ヶ月に1回だけの攪拌だけこなせばいいわけですから、労力もそんなに必要としませんし、、、ネ。
※14 【正規の方法にこだわりたい方はこちら】 2004.1.15更新
正規の方法として、ポリ袋のふたを閉じずに、きちんと荒櫂をすることで、ていねいに発酵させる場合の手順について、上記項番20以降の工程を説明します。
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作り方 |
写真 |
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【仕込み】 日曜 14:00〜3週間
仕込む容器の内側にポリ袋を二重に入れます。
ポリ袋に大豆を入れ、冷蔵庫に入れて十分に温度を下げた水に塩を溶かして作った塩水をとあわせ(以下
「諸味」 と呼びます)、十分に攪拌します。
これから3週間の間は、5日に1回くらいの割合で、荒櫂(要するに表面に浮いているものを砕き、沈めます)を行いますが、とくに諸味を混ぜ合わせるような攪拌はしません。保管場所としては、3週間くらいは、冷所に保管します。
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【発酵期間中の手入れ】 仕込み3週間目〜3ヶ月前後
諸味にしてから3週間経った頃に、少し暖かめのところに置き換え、品温が上がるようにすると、発酵がはじまります。発酵がはじまると、表面に小さな泡がプクップクッと出てくるようになります。
約2〜3ヶ月間は、3日に1回の割合で櫂入れを行って酸素を補給します。
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【寝かせる】 仕込み3ヶ月前後〜9ヶ月前後 この頃からは静かな発酵に切り替わります。発酵がおさまってきたら、空気が入らないように表面をぴっちりとポリ袋で覆い、ふたたび冷暗所で保管します。
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【絞る】 最短で仕込み9ヶ月後
表面をポリ袋で覆ってから、半年ないし1年後に絞り、瓶詰した状態で鍋に浸し、70℃で30分間湯煎して殺菌します。
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【できあがり】 はい、自家醸造醤油のできあがりです。仕込み当初は肌色だった大豆も、ばっちりと醤油の色に変わり、絞れた醤油はまさしく醤油!! この感動をあなたにも ヽ(^。^)丿
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※15 【3週間くらいは、冷所に保管】
仕込んだ大豆には、まだ発酵菌が少ないため、腐敗する恐れがあります。そこで発酵初期にあたる最初の3週間は、冷たい所、できれば冷蔵庫 (^_^;) に保管します。
また、正規の方法にこだわる方にお勧めしている、5日に1回の割合で行う「荒櫂」では、回数を控えめにして、諸味の中の容存酸素を少なくすることで乳酸菌を育てます。乳酸菌には、大気圧の酸素濃度よりも、若干不足気味の方が都合が良いのです。この初期に攪拌しすぎると、諸味中の酸素濃度が高くなり、乳酸菌が育つ代わりに酵母菌が優勢になってしまいます。初期から酵母菌が優勢にあると、できあがりの醤油が薄っぺらい味わいとなります。また乳酸菌を十分に育てることができていると重厚な味わいになるのです。また乳酸菌の大切な働きとして、他の雑菌の繁殖を押さえる、「滅菌作用」もあげられます。
家庭で作るような少量の醤油醸造の場合は、5日に1回の荒櫂をする場合も、表面に浮いている塊を砕く程度で十分です。攪拌しすぎると諸味中の容存酸素が増えすぎてしまい、乳酸菌の活性度が低下してしまいます。味噌なら仕込みの1ヶ月後に1回行う切り返しを行うだけで、十分な酸素が行き渡り、乳酸菌も酵母菌もしっかりと味噌を造ってくれますもんネ! 余計な酸素は禁物です!
※16 【表面に小さな泡】
この泡は酵母菌が生成した二酸化炭素です。同時にアルコールが生成されており、このアルコールの働きで表面に発生しやすい産膜性酵母の活動は抑制されます。この時期から、約2〜3ヶ月間は、3日に1回の割合で櫂入れを行って、表面に発生する産膜性酵母を、諸味の中に沈めてしまうのが本格派です。
この場合は、産膜性酵母との戦いになります。特に3ヶ月をすぎたあたりから、産膜性酵母が活性化し、発生が懸念されるようになりますので、当サイトとしては、ポリ袋のふたをぴっちりと閉じる方法をお勧めしているわけです。
※17 【表面をぴっちりとポリ袋で覆い】
静かな発酵に切り替わるこの時期以降には、アルコールの生成が少なくなり、これまで除菌されてきた産膜性酵母が活動を再開してしまいがちです。発酵がおさまってきたとはいえ、わずかに発酵が継続しているこの時期には、表面をびっちりとポリ袋で覆えば、発酵により生成されているアルコール成分の散逸を防ぐことができ、産膜性酵母の繁殖を阻害することができるのです。
この産膜性酵母という菌は、においが良くないばかりでなく、醤油の味も低下させる腐敗菌です。白いつぶつぶがこの産膜性酵母ですので、目についたら、すぐに諸味の中に沈めます。好気性であり、酸素がないと生きられないこの菌は、諸味の中では繁殖できないのです。
※18 【さらし布を長方形の袋状に縫製】
さらし布は、できあがり寸法で、60cm前後の長さに作っておけば、使いやすいようです。実際に使うときには、この内の20cmを残して蛇腹状に折りたたみながら諸味を充填していくので、使える長さは40cmくらいになります。
※19 【警告】
注意喚起です。手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。
※20 【お勧めコーナー】
とことんおいしい自家製生活。―自分で作る素材レシピ51 (単行本)
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しょうゆの絵本 (つくってあそぼう) (大型本)
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プリンに醤油でウニになる 味覚センサーが解明した仰天の食の謎 (サイエンス・アイ新書 33) (新書)
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発酵と醸造〈1〉味噌・醤油の生産ラインと分析の手引き (単行本)
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もやしもん 7―TALES OF AGRICULTURE (7) (イブニングKC) (コミック)
※おもしろいです。7巻では
醤油も登場します
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参考文献
片上醤油の片上さまには、いろいろなことをお聞きし、くわしく書いていただいたメールとWebで大変おせわになりました。ありがとうございます。
奈良県御所市森脇329 Tel 0745-66-0033 Fax0745-66-1933
片上醤油さんホームページ http://www.asm.ne.jp/~soy/
伝統食品の知恵 監修 藤井建夫 柴田書店