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イタリアーんではなかった「タバスコ」
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タバスコはアメリカのマキルへニー社の登録商標なので、ペッパーソースと呼んだほうがいいかもしれません。ただ英語ではペッパーというと混同が激しく、胡椒も唐辛子も、果ては山椒もペッパーという言葉にまるめられています。厳密に言うときには、唐辛子はRed
PepperやHot Pepper、Chili Pepperと呼び、山椒はJapanese Pepperとなりますので、やはりチリペッパーソースと最後まで、きちんと言うことになるでしょうか。
タバスコというとイタリアのソースのように誤解されていることが多いようですが、れっきとしたアメリカのソースなのです。イタリアではタバスコをピザにつけるようなことはせず、日本人だけに見られる特異な習慣だということです。ふーん。
また唐辛子の特徴を際だたせているカプサイシンという物質に対し、鳥は耐性をもつことがあり、無感覚になることもあるそうです。
つぇえ〜っ w(゚o゚)w
タバスコ150gの基本的な材料
鷹の爪など辛みの強い、真っ赤な乾燥唐辛子 25g →種を除いて12g
※生の唐辛子が手に入った場合は、ヘタを取った後の重量で100g |
塩漬け用の水
計算上88cc(88g)ですが90ccでO.K. |
塩漬け用の塩
できればミネラルを含んだ海水塩 3g |
穀物酢 50cc |
用意しておきたい器具
Let’s start!
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作り方 |
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1 |
【唐辛子】
粉砕済みの一味唐辛子を使う場合は項番3へジャンプし、さやのままの乾燥唐辛子を使う場合は、さっと流水ですすぎます。
※生の唐辛子を入手できた場合は、項番3の※印の注釈部へジャンプ
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2 |
【乱切り】
唐辛子の先端(花落ちと反対側)を切り落とし、はさみを縦に入れて種を除きます。虫食いの唐辛子などがあれば、選別し、除いておきます。これをはさみか包丁でテキトーに細切れにします。まるっぽのままだと、次の下漬けで、水をしみ込ませて、ふやかす工程に時間がかかるためです。
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3 |
【下漬け】
「乾燥唐辛子と水」を合わせた重量の3%の塩(当レシピでは唐辛子が12gで、水が88gなので塩は3g)を水に溶かし、唐辛子をふやかすために1〜3日下漬けします。
※もし生の唐辛子を入手できた場合は、唐辛子の3%の塩だけを加えます。(水を加える必要はありませんし、かつ、下漬けの必要もありません。ラクちん!)
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4 |
【すり鉢でする】
はじめはすり鉢に唐辛子だけを入れます。下漬けの水分は足りないことがわかってから足すようにします。最初に全量を入れてしまうとシャバシャバになってしまい、うまくすりつぶせません。
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5 |
【すりはじめてから3分】
唐辛子の皮の状態がまだまだ残っています。もっとすりましょう。
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6 |
【すりはじめてから10分】
ちょっと味噌のような感じになってきましたが、まだま粒が粗いようです。もっと気合いを入れてすりましょう。
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7 |
【すりはじめから20分】
ほぼすり終わった状態です。でもよく見ると粗いままの皮が見えていたりします。
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8 |
【裏ごしする】
ちょっと目の粗いざるなどで裏ごします。しゃもじなどで押しつけるようにして、すりつぶすつもりで裏ごしするといいでしょう。
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9 |
【ざるの裏側】
ざるを裏返すと、裏ごしされた均一な粒の唐辛子がでてきていますので、これをしゃもじでこそげ取り、別容器に取り分けていきます。
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10 |
【裏ごしを終えた唐辛子】
裏ごしを終えると、まるで豆板醤そっくりになります。裏ごしできず残ったカスはこれを集め、すりつぶし、また裏ごしするという作業を何度となく、繰り返します。最後まで残ったカスは捨てても構いませんが、裏ごししたものに加えても、特段舌触りを悪化させることもありませんでした。
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11 |
【本漬け】 穀物酢を加え、適宜項番4で残しておいた「下漬けで余っている塩水」とを十分に混ぜ合わせて、ドロドロと流れ出るくらいの流動性をもつようにしてから瓶詰めし、6週間発酵・熟成させ、ゆっくりと唐辛子を溶かします。熟成期間中は、適宜容器ごとシャッフルさせ、中の液体を均一にします。
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12 |
【できあがり】 これでできあがり!!
酢のにおいがツンツン、かっ辛〜いっ! w(゚o゚)w
OH!
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ここでのコツ
※1 【カプサイシン】
唐辛子の辛さをあらわす単位として、スコヴィル単位というものがあります。これは唐辛子の辛味成分であるカプサイシンがアルコールに溶けることを利用し、唐辛子をアルコールに一晩漬け込み、この液に甘みのついた水を加え、何倍希釈したときに辛味を感じなくなるか、、という倍数で表したものです。
例えば、タバスコは3万〜5万倍に希釈したときに辛味を感じなくなるので、3万スコヴィルとか5万スコヴィルといいます。日本の鷹の爪(三鷹)は5万〜6万、能鷹は12万5千〜15万スコヴィル。ハバネーロは、30万スコヴィルとなります。
※2 【真っ赤な乾燥唐辛子】
タバスコの商標をもっているマキルヘニー社の規則では、「タバスコは摘み取ってから二四時間以内にするつぶさなければならない。」ということなので、乾燥唐辛子を使うことなぞ、本当はあり得ないことです…。ちなみにこの時間的な制約は、1つの唐辛子から、できるだけ多くの汁(最低でも1つのタバスコの果実から七滴の汁)を搾るために設けられた基準だそうです。
とは言っても、なかなか真っ赤な生の唐辛子の入手は容易ではないので、やむなく乾燥唐辛子を使っています。生の唐辛子を入手できる方は、ぜひ生の唐辛子をお使い下さい。
※3 【はさみを縦に入れて種を除きます】
種は、若干残ってしまっても構いません。ただし種は白色なので、種を混合すると、できあがりが真っ赤ではなく、うすいピンク色というか、オレンジがかった色にぼやけてしまいがちです。真っ赤なタバスコを作りたいのであれば、種はきれいに取り除くことをおすすめします。
※4 【唐辛子をふやかすために1〜3日下漬け】
唐辛子が十分にふやけていないと、次の工程の裏ごしがたいへんになります。
※5 【生の唐辛子を入手できた場合は、唐辛子の3%の塩だけ】
この場合に悩むのは、種をどうするか、、、です。種は前述のとおり、タバスコに混ぜてしまうとできあがりが真っ赤に発色せず、鈍いオレンジ色になってしまいがちです。ということで種の扱いについてはお好みということになりますが、種を取り除くときには、種を包んでいる「わた(胎座)」は取り去らないようにします。これは唐辛子の中でも一番辛い部分であるためで、辛さを追求するタバスコから辛み部分を取り除くことは、極力避けたいからです。
※6 【すり鉢に唐辛子だけを入れます】
前述のとおり、真っ赤ではなくなってピンク色になっても構わないのであれば、種は入ったからといって問題はありません。
※7 【裏ごしするという作業を何度となく、繰り返します】
このときに裏ごしできず、カスのように余った唐辛子の皮の扱いですが、3通りあります。(当レシピでは2つめを採用)
1つめは、丹念に繰り返し裏ごししたことで、カスはほとんどなくなっていることを前提に捨ててしまうこと。
2つめは、丹念に繰り返し裏ごししたことで、カスも丹念に繰り返しすりつぶせており、それなりにきめが細かくなったことを前提に裏ごししたものと混ぜてしまうこと。
3つめは、カスに水等を加えてとろ火で数時間煮ることでやわらかくして絞り、果汁を使用する(カスはここまでしてからやっと捨てる)方法です。
※8 【6週間発酵・熟成させます】
マキルヘニー社の「タバスコ・ソース」の製法特許登録内容では、「6週間」となっていますが、ホームページ他では、「3年間」という表記が大半を占めています。
ここで下記にマキルヘニー社創業当時の1870年に登録した製法特許内容と、トウガラシの文化誌の説明文の中に掲載されていた製法を、比較して紹介します。特許の中の記述では、酢の分量が唐辛子の1/8となっているのに対し、トウガラシの文化誌では1/2と紹介されているなど、双方には何カ所か相違がありますが、同社の宣伝用パンフレットには、「ソースの製造も、ソースの基準も創業以来まったく変わっていません。」という記載さえあるとのことです。
結局どちらが事実なのか、究明できませんでしたので、当レシピでは、家庭でつくることを考えたときに、腐敗しにくいとか、お手軽にできるということを条件にして、下表中、文字を赤字にした方法を採用しました。
まず、酢の分量については、市販品の粘性度から判断しねばり気が同等になるよう、酢をすりつぶした唐辛子の半量としました。
次に塩加減については、塩の一握りが約50g〜60gであることや、食品成分表においても、チリペッパーの塩分量は100gあたり1.6gとなっていることを考慮して、できあがりで2%になるようにしました。これはトウガラシの文化誌では、塩はタバスコの重量比で8%となっており、かつ、塩漬けを終えたタバスコは、塩水を捨てるようですので、塩分量としては、ほとんど差異がないものとなるようです。
最後に、熟成期間ですが、これは「3年間」を信じましたが、家庭での手作りには非現実的ですので6週間としています。
そうそう、3年間も発酵・熟成させるということとなると、「タバスコは醤油とおなじジャン(醤)で、草醤の一種だ」という説明をしている方もおられました。 w(゚o゚)w
OH!
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マキルヘニー社が1870年に登録した製法特許内容 |
「トウガラシの文化誌」での
製造工程の記載内容 |
1. |
よく熟したタバスコ・ペッパーの果実をつぶし、粘りのある液体にする。 |
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2. |
それに上質の蒸留酢と岩塩を混ぜる。その割合は、すりつぶした果肉と果汁1ガロンに対して、酢は1パイント(八分の一ガロン)、塩が一握りである。 |
・タバスコ・ペッパー100に対し、塩は8
・すりつぶす |
3. |
こうしてできた液体を容器に詰めて密封し、約六週間寝かす。 |
樫の樽に詰め、熟した液からでる空気を逃がしながら三年間寝かす |
4. |
濾過して種子をとりのぞく。 |
・麻袋に入れ、3日間かけて自然に流れ出る塩水を廃棄する
・タバスコ・ペッパーの液二ガロンに対して、酢を一ガロン加える。その酢はサラダ・ドレッシングに用いられるものより二倍も強力な穀物酢である。
・4週間の間、昼間には1時間15分ごとに15分間攪拌する。
・濾過して種子と繊維をとりのぞく。 |
5. |
発酵を防止するために一オンス(0.45kg)につき一滴の石灰の重硫酸塩を加える。 |
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6. |
ふるいを通らなかった皮とあわも利用する。一ポンドにつき一オンス(16分の1ポンド)のアルコールを混ぜて、約24時間とろ火で煮る。 |
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7. |
この煮たものをよくかき混ぜ、その後圧搾機にかけて絞り、もう一度粘りのある液状の果肉と果汁を取る。 |
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8. |
その液体一オンスにつき、石灰の重硫酸塩を一滴加える。 |
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9. |
このようにしてできた二種類の液体の混合物を混ぜ合わせる。 |
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10. |
混ぜたものを目の細かい小麦用のふるいにかけあわせると、タバスコ・ソースは完成する。 |
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※9 【ゆっくりと唐辛子を溶かします】
「溶かす」という表現にピピピッときました。フルーチェを作ったときに、「アルカリ」の力でペクチンを溶かし、細胞をばらばらにしたり、「酸」の力で細胞壁の主成分であるセルロースを分解し、ブドウ糖やセロビオースにしていました。つまり、酢を加えることによって、微生物の発酵の力でも分解しきれなかった唐辛子のカスにとどめを射し、徹底的に分解しているのだと考えたのですが、どうかなぁ…。
※10 【警告】
注意喚起です。手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。
参考文献
・トウガラシの文化誌 晶文社 アマール・ナージ著 定価2,800円
・うまい桐生うどんさんの世界の麺類は醤(ひしお)文化の兄弟
・SUN'S COURTさんのいろいろなスパイス
・Hot Pepper Home Pageさん
・食品成分表データベースさんのチリペッパーソース