こんな効能もあります |
【1.はじめに】 砂糖のちからときたら、やっぱり塩のちからを書かずにはおられません。元々このシリーズを書きたくなったのは、食べ物に塩を入れるのは、こんな理由があったんだ!! という発見があったからです。塩は、食べ物に塩辛い味を加えるだけでなく、いろいろな働きをしています。野菜の発色を良くしたり、微生物の発酵を手助けしたり、タンパク質を固めたりと、もう、数えはじめたらきりがないくらいです。
【2.塩の製造方法】 岩塩から取り出す方法や、海水を煮て取り出す方法、海水を電気のちからで分離して取り出す方法などいろいろあります。 2−1.岩塩(採掘法) 日本にはありませんが、地層のなかにある岩塩を、鉱物資源を掘り出す要領で採掘します。岩塩層が地表に露出している部分では露天掘りも行われます。 2−2.岩塩(溶解法) 同じく日本にはありません。地層のなかにある岩塩に水を流し込んで飽和食塩水を作りだし、真空蒸発缶にて結晶化する方法です。 2−3.揚浜式塩田 1.浜辺の一段高くなった部分に海水を撒き、 2−4.入浜式塩田 瀬戸内海地方で17世紀から行われていた方法になります。 2−5.イオン交換膜電気透析法 イオン交換膜に電気を流し、塩水に溶けたナトリウムイオン(Na+)と、塩素イオン(Cl−)を透析して、抽出する方法です。日本で古来から行われていた揚浜式塩田や入浜式塩田にくらべ、広大な浜辺を必要とせず、安価にかつ、安定して塩を供給することができます。しかし、塩化ナトリウムの純度が高く、自然界の海水に含まれる塩のバランスと大きく異なり、塩辛く、とんがった味がするのが特徴です。 では、何故こんな塩辛いだけの塩がこんなにも蔓延しているのでしょうか? 1971年から1997年4月までの間、塩近代化臨時措置法という法律がありました。この法律は、工業を近代化させるために、揚浜式塩田や入浜式塩田が立地していた海浜を有効利用したいという政府の思惑と、工業で使われるソーダ(塩のこと)を天候に関わらず、安定供給したいという工業界の思惑が一致して成立した法律でした。このため、揚浜式塩田や入浜式塩田は、一部の神事・観光・研究目的の生産を除いて、日本からは姿を消し、電気の力で海水中のイオンから精製する、味気ない塩だけが残りました。 1997年4月に塩近代化臨時措置法は撤廃され、塩事業法が施行、また2002年4月からは塩事業法も撤廃され、やっと塩の製造が完全自由化されました。 【3.塩の種類】 3−1.精製塩(旧専売公社の塩、旧JT塩) 1997年までは、食卓塩と言えば基本的にこの専売公社が販売する精製塩でした。精製塩は、水分を吸って固まることを防ぐために、炭酸マグネシウムが0.15%添加されており、サラサラの塩となっており、一方、塩化ナトリウム(NaCl)の純度が99%の塩です。マグネシウムやカリウム、カルシウム等は1%以下しか含んでいないため、単一な味で、うま味に欠けています。 3−2.再生加工塩 塩近代化措置法により、専売公社の塩を買う以外になかったときに、ミネラルを含む塩の流通を望む消費者運動が起こり、製造を認められた加工塩です。塩化ナトリウム(NaCl)の純度が99%の原塩に、にがり成分のミネラルを添加して作ります。商品名としては、赤穂の天塩や、伯方の塩、瀬戸のましお、シママースなどがあります。 3−3.自然海塩 揚浜式塩田や入浜式塩田で作られる塩になります。 3−4.岩塩 地層に含まれる岩塩を採掘して取りだした塩です。 【4.塩のちから】
また、たまごをゆでるときに、湯に塩を加えておけば、殻にひびが入っても卵白が溶け出しません。魚を焼くときや、肉を焼くときに焼く直前に塩を振りかけるのも同じです。熱でタンパク質は固まる性質がありますが、塩を振りかけておけば、魚や肉の表面が早く固まる性質があるのです。早く固まれば、うまみのたっぷり入った汁が、溶けだしてしまうのを防ぐことができます。 4−4.防腐剤としての塩
4−5.よび塩(迎え塩) 塩出しするには1.5%濃度の塩水がいいようです。真水で塩抜きすると表面だけが水っぽくなってしまいますが、薄い塩水を使うとゆっくりと塩出しをすることになります。この「ゆっくり」という時間が大切なのです。苦み成分の塩化マグネシウムなどは塩化ナトリウムよりも塩抜きするのに時間がかかります。真水で塩だしをすると、塩化ナトリウムだけがとれた状態となり、苦み成分が残ったままとなってしまうのです。塩出しは、薄い塩水を使って、ゆっくりとするのが大切です。
4−7.りんごの褐変を防止する りんごに含まれるポリフェノールオキシターゼという酵素による酸化反応を0.3〜0.6%の塩分で止めることができます。
【5.まとめ】 ここに挙げた内容は、普段の生活の中で既にご存じだったという方も多いはず。それでも改めて読み返すことで、あっそうなんだ、と思われたのではないでしょうか。塩は塩味をつけるだけではありません。塩分控え目にするときも、これらの働きを理解した上でやるのと、知らないでやるのとでは、メリハリの効かし方が変わってきますよね。 参考文献) ・21世紀こども百科科学館 小学館
ISBN4-09-221202-1 |