桜の香りがする「桜葉の紅茶」 |
緑茶と紅茶の決定的な違い、それは発酵の有無にありました。緑茶では摘んだ葉を加熱することで、葉に含まれている酵素の働きを停止させます。紅茶では汁がでるくらいに葉をもんでわざと葉に傷を付け、緑茶とは逆にこの酵素の働きを利用しているのです。(緑茶の作り方はこちら、ほうじ茶の作り方はこちら)
紅茶は、もともと中国の緑茶をヨーロッパまで延々とシルクロードをとおって運ぶ間に赤茶けて紅茶になった、という話を聞いた記憶があります。緑茶のように製造工程のなかで一度加熱して、酵素の働きを止めたものは赤茶けた紅茶にはなりません。シルクロードをとおる間に葉が発酵して紅茶が生まれた、というわけです。こんな紅茶のことを考えていると、遙かな時の流れを超えてシルクロードに対して急に親近感が湧いてきました。
基本的な材料
茶の葉 (今回は茶葉として桜の葉を使用) |
Let’s start!
作り方 | ||
1 | 【摘採(てきさい) plucking 茶摘み】 茶の新芽を摘みます。今回は桜の葉を使った紅茶を作っていますが、桜の葉に限らず作り方は同じです。 ※桜の葉に深い意味はありません、単に茶の葉を入手できなかっただけです。 (^^ゞ |
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2 | 【萎凋(いちょう) withering
しおらせる】 摘んだ茶葉を水でさっと洗い、扇風機の風に当てて、しおらせます ※1。痛んだ葉があれば、取り除いておきます。 |
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3 | 【揉捻(じゅうねん) rolling
もみ込む】 茶葉をもむことで葉の表面に傷をつけます ※2。かなり重労働です。欲張ってたくさんをわしづかみにしても、しっかりもむことはできません。少量ずつ手にとって、丹念に両手の手のひらを使ってもみ込んでいきます。私は2つの漬け物石を石臼のように使って葉をすりつぶしました。 |
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4 | 【発酵 fermentation 発酵させる】 温度20〜26℃、湿度90%以上で3〜4時間発酵させます ※3。草っぽいだけだった葉の香りが、発酵を終えると紅茶の色と香りになっています。発酵には保温調理鍋のシャトルシェフを使ってみました。 |
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5 | 【乾燥 firing 火いれ】 茶葉を1〜2分ずつ小刻みに電子レンジにかけて ※4、乾燥度合いを確認しながら乾燥させます。湿り気が無くなるまで繰り返します。 |
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6 | あら熱をとり、湿気をとばせばできあがりです。 | |
7 | 【試飲】 午後のひとときに、桜葉の紅茶を楽しみましょう。 |
ここでの「こつ」
※1 【しおらせます】
急がないようであれば摘んできたままザルに広げておき1日待ちますが、急ぐようであれば扇風機に当てれば3時間〜6時間くらいで同じ状態になるはずです。工業的にはこのしおらせる工程の目的として、以下の2点が上げられます。
1.次に行う、「もみ工程」に備え、茶葉を柔らかくするため
2.季節や天候による茶葉の乾燥のばらつきをなくし、自動化工程での発酵を均一にするため
※2 【茶葉をもむことで葉の表面に傷をつけます】
本当の(桜の葉ではない本来の「お茶」という意味)茶葉にはポリフェノールオキシターゼという酵素とポリフェノールが含まれています。もむことによって、茶葉に含まれているポリフェノールと酵素を接触させ、発酵(酸化)させているのです。この発酵により草の香りは甘みに変化します。つまり、もみ方が強いほど甘く、弱ければ草の香りが残る茶となります。桜の葉も、もむ前に蒸気を当てているものと比較すると、顕著に赤黒く変色しました(ポリフェノールオキシターゼ効果??)
揉捻(じゅうねん)
は、結構力がいりました。はじめはテレビでみた茶揉みのように手のひらを使って揉み込もうとしたのですが、それではなかなか発酵せず草のにおいがそのまま残ってしまいました。 発酵が正常にすすめば草のにおいは酵素の働きで甘みに変化するということですから、もみこみが不足していると判断し、石と石を使って葉をこすりあわせたわけです。 石と石ですりつぶすときに手加減はせず、できうる限り均一につぶすようにしました。
※3 【発酵させます】
この発酵は、揉捻(じゅうねん)によって絞り出された、「茶葉に含まれているポリフェノール」と「酵素」が反応する発酵です。ポリフェノールが酵素の働きで酸化され、テアフラビンとテアルビジンに変化し、紅茶独特の赤っぽい色に変化します。
今回使ったシャトルシェフでは、通常空気層になる空間に25度前後の湯をコップ1杯ほど張っておくことで、温度と湿度を保てるようにしました。これと同じことはクーラーボックスを使っても可能です。
※4 【電子レンジにかけて】
1〜2分程度に分けて電子レンジで加熱することによって、酵素を破壊して発酵を停止させるとともに、乾燥させて保存性を高めます。
※5 【紅茶を楽しみましょう】
NHKのためしてガッテン(2004年1月14日放送)
他
によると、次のようにすれば、おいしい紅茶が飲めるようです。
おいしい紅茶の飲み方 | 理由 | |
1. | 水は軟水 | 硬水だと、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれており、苦みのタンニンが出てしまうため |
2. | ポットはできれば丸型のものを用意する | 茶葉がお湯の中で浮いたり沈んだりすることを繰り返すことをジャンピングといいます。ジャンピングさせることで、茶葉に含まれるうまみ成分を十分に引き出すことができるのです。 丸形のポットは、お湯を注いだときの勢いにより、ポットの中にできた対流が長続きし、ジャンピングを助けます |
3. | ポットとカップはあらかじめ温めておく | お湯を注いだときのジャンピングを長続きさせることができます |
4. | 小さめのポット1杯(カップでいえば2.5杯相当)あたり、茶葉を大さじ1 | 英国では、「ポットのための1杯」として、茶葉を1杯余計に入れるようですが、日本の水は軟水ですので、これをすると濃く出過ぎることもあり、渋く感じることがあるとのことです。 |
5. | お湯の温度は沸騰する前の95℃ | 湯冷ましのように一度でも沸騰させてしまうと、お湯に溶けている酸素がなくなり、お湯を注いでも茶葉に付着するモノがなくなるため、茶葉に浮力を与えられず、ジャンピングできなくなってしまいます |
6. | ポットに紅茶の葉を入れ、お湯は勢いよくなるように高い位置から注ぐ | 前述のとおり、お湯を注いだときの勢いにより、ポットの中にできた対流が長続きし、ジャンピングを助けます |
7. | 紅茶の葉が底に沈めばむらし完了(約3分) | 茶葉のうまみ成分が出きる時間で、これ以上長くしても苦みがでるため |
8. | スプーンでさっとひとかき | うまみは重く底に沈んでいるため、ひとかきすることで全体を均一にします |
おまけ1 | ティーバッグの場合も同様 | お湯を勢い良く注いだ後、ティーバックを入れて作ります。 コップはティーバッグを縦に入れたときに、お湯に浸る深さのあるものでかつ、ティーパックが横向きに浮かぶ余裕のあるものなら、上記と同じようなジャンピングが起こります。 ただし、茶葉が一枚ずつバラバラと浮くのではなく、TVではティーバッグそのものが浮いていました。 |
おまけ2 | ポットのお湯を使うとき | ポットのお湯は沸いてから時間が経過していることが多く、容存酸素量は低い傾向にあります。このため、コップ1〜2杯を新たに給水し、蒸気口から蒸気がでる頃合いを見計らって、お湯を注ぎます。 また、給水する前の湯がポンプに残っているため、1杯目はコップ暖めようとして廃棄し、2杯目から使うようにします。 |
謝辞)
今回、福知山市立成仁小学校3年生のみなさんからの質問を元に、一部説明の追記を行いました。
ありがとうございます。みなさん紅茶作り、がんばってくださいね。
参考文献
1.NHKのためしてガッテン(2004年1月14日放送)
2.茶の文化フォーラムさんの紅茶
3.平成大和撫子さんのこぽこぽ紅茶
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