※4 【発酵器の準備】
今回使用した発酵器の構造を右に示しておきます。発酵器には1.2リットルの保温水筒を使っています。ただし、納豆の発酵には新鮮な空気が必要なため、水筒の中栓に工夫を凝らしました。ふたは、熱反射を目的としたアルミホイルのふたと、断熱を目的として2重3重に折り畳んだタオルのふたの二重構造です。またアルミホイルには新鮮な空気が入るように箸で空気穴を空けておきました。この発酵器は、発酵初期には湯の熱で発酵が進み、発酵後期には納豆菌の繁殖によって発生する熱によって発酵が進むというしくみです。
※5 【納豆菌はしぶとい】
通常、雑菌を殺菌するには熱湯が使われることが多いのですが、納豆菌は100℃の熱湯の中でも容易には死滅しません。
2003年9月24日に放送されたNHKのためしてガッテンでは、100℃5分間の加熱実験をして、死滅しないことを報告していました。これは、納豆菌が「胞子」の形で生き延びるためです。
また、40℃の高温高湿度の条件を与えてやると、30分に1回の割合で細胞分裂していくため、1個の納豆菌でも24時間後には、2の48乗回の分裂で軽く100兆個以上に増えるのです。
※6 【空気を含ませた状態のまま】
納豆は好気性細菌に分類され、酸素が多い環境を好みます。納豆を作るときには、温度40度前後、湿度はできるだけ高めにして、空気にふれるようにしてやるほうがいいのです。その点稲わらなどは保温性・保湿性ともに良く、通気性もあることから、納豆菌が繁殖するためには、最適な条件なわけです。
※7 【冷蔵庫に入れて1日くらい後発酵を行います】
納豆のできたてはアンモニア臭が強いものです。このため、冷蔵庫に入れて納豆菌の活動を抑止させ、アンモニア臭が放散するのを待って食べることにします。できれば2日くらいは待つ方がいいでしょう。
※8
【はじめはうまくできたのに、最近失敗が続くという方へ】
チェック項目を並べてみます。
項番 |
チェック項目 |
チェック欄 |
説明 |
@ |
発酵温度は下がっていませんか。 |
□ |
納豆は多少の高温には耐えますが、低温では発酵しません。特に30度を切るようだとまず発酵は期待できません。温度が低くなるようなら、お湯の温度を55度〜60度くらいにしてみてください。 |
A |
少量仕込みをやろうとしていませんか。 |
□ |
作り置きによる腐敗を心配するあまり、少量仕込みをやろうとしていませんか。少量仕込みは温度が下がりやすいので注意が必要です。 |
B |
余計な水分を含ませたままではありませんか。 |
□ |
余計な水分を含んだまま発酵させていませんか。余計な水分は発酵を阻害します。水切りは念入りに行ってください。特に納豆の表面だけに菌糸がはり、内部まで菌糸が入っていないような場合は、水切りの不足が考えられます。納豆の表面の水分を不足させ、納豆の菌糸が水を求めて、納豆の内部まで菌糸を生やすようにさせる必要があります。 |
C |
酸素が不足していませんか。 |
□ |
納豆は大量の酸素を必要としますので、呼吸できるようにしてやらないと途中で酸素不足に陥り、発酵速度が減退します。酸素を取り入れる工夫をしてください。 |
D |
途中で過度に混ぜ合わせていませんか。 |
□ |
納豆の発酵中に混ぜているようですが、こういった菌類はコロニー(一種の集団)を形成して発酵を爆発的にすすめていきます。このコロニーを守るためにも途中で混ぜるのは控えた方がよろしいかと思います。 |
E |
ヒートショックは与えていますか。 |
□ |
納豆菌はこのヒートショックで納豆菌そのものは死滅しますが、胞子を目覚めさせ、この胞子を発芽させることで納豆にしていくものです。 |
F |
発酵は十分に進んでいますか。 |
□ |
納豆が十分に発酵すると、アンモニア臭がしてきます。実際に食べるときにはこのアンモニア臭をとばしてから翌日以降に食べるくらいのものが糸のひき具合も良かったりします。発酵が不十分だと、一見きっちりと発酵していたように見えても、実際に食べるときに納豆というよりも、大豆だったりします。発酵時間は発酵器が維持できる発酵温度に大きく左右されますので、適宜調整が必要です。 |
※9 【警告】
注意喚起です。手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。
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