本醸造みりんの頁へ  最初の頁へ戻る  砂糖の頁へ

丹念に仕上げる「かつお節」

 かつお節削り器が絶滅に瀕しているという話はぬか漬けのページで紹介していましたが、かつお節は鰹削り(もしくは鰹節削り) ※1という形で立派に生きています。和食を作るには欠かすことができないかつお節ですから当然のことでしょう。 特に私の場合はお好み焼きの仕上げで必須アイテムとなっています。 2001年9月11日の同時多発テロのときにアトランタにいたのですが、このときにも、 「お好み焼きを焼いてくださいよっ!」 というリクエストに対し、 「かつお節がなけりゃ、お好み焼きは作れない!!」というこだわりがあって、 結局焼けずじまいでした。 (^_^;)   まぁ、食べ物に困った状況でもなかったので、かつお節がないことを理由にしただけなんですけどね。

 みなさん海外出張のときはかつお節を持って行きましょう。 ←おらんおらん、1週間の出張ごときでお好み焼きを焼く奴なんて… (*^▽^*)/


かつお節の基本的な材料

鰹 半身 砂糖 1回の薫製につき大さじ1
燻製用チップ(できればナラやクヌギ) 1回の薫製につきひとにぎり 
※参考情報
  ・砂糖を手作りする方法はこちら

用意したい器具

スモーク用の 煮熟時に鉄かごの代わりにする「ざる」

Let’s start!

作り方  
【生切り】

 生の鰹 ※2を3枚におろし、血抜きをします。といっても1匹をまるごと買うのも高いので、夕方のセールで半額になった半身を用意してしまいました。 (^_^;)  かつお節作りが成功するとは思えなかったもんで…

【煮熟(しゃじゅく)】

 身がくずれないように、鰹をざるに置き ※3、90度以上の熱湯で1時間煮ます。

【急冷】

 煮熟の完了した鰹は、すぐに水に浸けて冷やし、腹身と背中側の上下2つ ※4に割ります。これで1匹の鰹は、4つのかつお節になります。

【骨抜き】

 残っている骨があれば、水の中にいれたままで骨を抜きます。

【焙乾(ばいかん)】

 鰹の表面をいぶします ※5。第一段階では、業者は薪にクヌギを使い直火で強い熱 ※6を与えるようですが、家庭ではスモーク缶 ※7の中に薫製用のチップ(お好みに応じて何でも)と砂糖を混ぜ合わせたものを、皿状にしたアルミホイルに置いて、中火でいぶします。一回のいぶし作業は50分行い、チップと砂糖を新しく交換した後、鰹を裏返しもう一度行います。

【荒本節】

 水分をとばすために第二段階のいぶし作業を行います。一日に5時間くらい、70〜80度でいぶす ※8という作業を、6〜20日間(業者によって異なります)繰り返します。一日の残りの時間はスモーク缶の中に置いたまま熟成させ、かつお節の表面と内側の水分量を均一にします。家庭では6回もいぶせばいいでしょう。鰹の表面が真っ黒のタールで覆われていれば、くん製用のチップと砂糖は交換せず、そのまま利用します。

 黒光りした荒本節のできあがり。荒本節で固いものをたたくと、コンコンという音がします。関西ではこの荒本節を薄く削って、鰹削りとして利用します。
【裸節】

 荒本節の表面を削って裸節をつくります。裸節は鰹の表面についたタールを削り落とすと共に、形を整えます。

 これで裸節のできあがりです。荒本節よりも香りはおとなしくなり、表面の光り具合が異なります。
10 本枯節 ※9】

 ちょっと、ご紹介だけ…。裸節の表面にカビを植え付け、温度28度、湿度80%に保った容器で2週間ほどカビ(青かびの一種)を発生させます。カビを付けてかつお節の水分をとばし、脂肪分を分解させるわけです。分解された脂肪分はうま味に変化します。カビ菌が入手できなかったので、パスさせてください。 (>_<)ヽ

 
11  カビを落とし、強い日差しの下で干します。このカビ付けと日干し ※10を4〜5回繰り返します。合計90〜150日間(業者によって異なります)も行うのです。

 写真は裸節を削って、鰹削りとしたものです。

     

ここでの「こつ」

※1 【鰹削り(もしくは鰹節削り)
 荒本節や裸節などカビ付けしていないかつお節を削ったものは、鰹削りと呼ばれ、本枯節を削ったものは鰹節削りと呼ばれます。

※2 生の鰹
 かつお節には、あぶらの少ない鰹が向いています。

※3 【鰹をざるに置き
 鰹の形を左右する工程です。業者はこの工程を篭立て(かごたて)といい、変形して仕上がりの形が悪くなることのないように詰めていきます。家庭でかつお節を作るときにはたくさんを並べるわけでもないので、詰め方うんぬんといってもどうしようもないですけど…。でも紐でしばったりして整形しておいた方がよかったかも…。

※4 【腹身と背中側の上下2つ
 
腹身からできるかつお節を雌節(めぶし)背中側からできるかつお節を男節(おぶし)と呼びます。身が小さいときにはこのように割らずにそのまま節にします。このようなかつお節を亀節と呼び、2つに分けていないことから縁起物として利用されます。

※5 【鰹の表面をいぶします
 大きく2つの段階にわけることができます。第一段階は香り付けのためにいぶす工程で、裏表それぞれ50分ずつ中火いぶします。第二段階は、乾燥のために燻す工程で、1日に5時間くらい70〜80度で燻します。火を炊いていない時間もかつお節作りには大切な時間であり、鰹の中の水分を均一にしています(「あん蒸」と呼びます)。業者の中にはこの第二段階のいぶし作業に20日間ほどもかけるところもあるようです。大量に仕込んでいるので燃料代などのコストも低くなりますが、家庭で高々1つのかつお節を作るために20日間もかけるとなると気が遠くなりそうです。 (@_@)/

※6 【直火で強い熱
 必要以上に高温にすると「火ぶくれ」といってかつお節の表面が膨れてしまいます。やみくもに高温にはしないことですね。

※7 【スモーク缶
 市販されているスモーク缶は1万円から3万円と、ぴんきりです。これをガソリンスタンドでもらえるオイル缶で代用すればタダにすることができます。ただしオイル缶にはいろんな不純物が混ざっているため、スモーク缶として使う場合には、できるだけ不純物を取り除いてから使いたいものです。
 一例として、私がやっているスモーク缶の作り方を紹介します。

 1. オイル缶についている汚れは、ボロ布などでできるだけふき取っておきます
 2. 缶の隅に付着している汚れは、少量のベンジンやガソリンなどの有機溶剤※ を流し込み、溶かして吸い取ります
 3. 台所用洗剤でオイル缶の中を洗浄します
 4. オイル缶をから焼きします
 5. 錆止めのために、食用油を塗りつければ、立派なスモーク缶のできあがりです

※警告!! ベンジン、ガソリンなどの有機溶剤は汚れを溶かす力も強力ですが引火性も強いため爆発など取り扱いには十分に注意しましょう

※8 【70〜80度でいぶす
 この工程ではくん煙にあてることよりも、かつお節を乾燥させることを主目的としています。ただし中途半端に温度を上昇させると雑菌が繁殖おそれがでてくるため、くん製の殺菌温度に倣って乾燥させることにしました。通常のくん製では、細菌を殺菌するために70度前後に保ちますので、それを参考にしてここでは70〜80度前後で繰り返しやっています。参考文献にも載っていなかったのでご指摘などいただけるとうれしいです。(すみやかに訂正します)

※9 【本枯節
 カビをつける前のかつお節を荒本節といい、カビをつけたものを本枯節と呼びます。荒本節は香りとコクがあり、本枯節は上品なうま味があります。関西は荒本節の薄削りが使われ、関東では本枯節の厚削りが使われることが多いようです。

※10 【カビ付けと日干し
 カビと日干しの効果で、荒本節の水分量が35%なのに対し、本枯節では18%以下の水分量になります。生の鰹の水分量は70%ですからかなり乾燥しています。

参考文献)

 味を求めて百年「山政」 (やままさ) http://www.yamamasa.co.jp/top.html
 手火山造りのかつおぶしのやまじゅう

本醸造みりんの頁へ  最初の頁へ戻る  砂糖の頁へ